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【インバウンドの観光トラブル】 オーバーツーリズムが“世界的な大問題”となっている歴史的なワケ

世界の中の日本人・海外の反応

 

■観光トラブルにより「外国人への特別料金」がスタンダードに

 

 少なくとも20世紀末頃まで、観光トラブルと言えばスリや置き引きなど、旅行者が被害に遭うものばかりだった。それがわずか20余年で、まさか旅行者が加害者の立場になるとは。

 

 世界はこの問題に手をこまねいているわけではなく、イタリアでは2011年に宿泊税の徴収が開始され、ヴェネツィア市はこれに加え、2024年から入島税の徴収を開始した。ヨーロッパの主要観光地でこれに倣う動きが続発すると思われる。

 

 ヨーロッパ以外の地域では、外国人に特別料金を科す二重価格制が早くから取り入れられ、鄧小平時代の中国では、観光名所の入場料が外国人は中国人の1・75倍となっていた。

 

 このくらいの差はまだ可愛いほうで、現在のところ、エジプト・ギザの大ピラミッドは外国人に9倍、インドのタージマハルは38倍、ヨルダンのペトラは50倍の料金を科している。本来これらは内外の所得差を考慮しての設定だったが、期せずしてオーバーツーリズム対策を先取りしたかのような形となった。

 

■日本におけるオーバーツーリズム対策

 

姫路城でも、訪日客向けに4倍の価格設定を検討中

 日本では姫路城で二重価格導入の動きが見えるが、いまだ決定には至っていない。日本は万事において対応が遅いのかと言えばそうではなく、新宿のゴールデン街ではパンデミック以前からすでに、「お通しトラブル」を防ぐため、お通しの分を個々のドリンク価格に上乗せした「外国人用メニュー」が浸透していた。お役所を通す必要がなく、小回りの利くところの対応は早い。

 

 法外なぼったくりは日本の恥だが、オーバーツーリズム対策としての二重価格や別メニューの提示はやむをえないこと。日本が「何でも安い国」になった現状を認めたくない人もいるようだが、現実を直視しないことには何も変わらない。インバウンドを経済成長の牽引役と期待するならなおさら、オーバーツーリズム対策を早急かつ続々と打ち出すべきではないだろうか。

 

 

 

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過去記事

島崎 晋しまざき すすむ

1963年東京生まれ。立教大学文学部史学科卒業。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て、現在、歴史作家として幅広く活躍中。主な著書に『歴史を操った魔性の女たち』(廣済堂出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』(日本文芸社)、『仕事に効く! 繰り返す世界史』(総合法令出版)、『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『覇権の歴史を見れば、世界がわかる』(ウェッジ)など多数。

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